『…水かどうかを確かめるために、ある試験紙を用います。ある試験紙とは何ですか。その名称を書きなさい。』
これは昨日の理科の授業で行った北辰テスト過去問にあった問題です。
答えは「塩化コバルト紙」。
なぜ、この問題を取り上げたのか。
AクラスとBクラスで正答率に大きな差があったからです。
Aクラスではこの問題はほとんどの生徒ができていました。
一方、Bクラスでこの問題を答えられたのは2名だけ。
こういう話をすると、こんなことを言いたくなる生徒さんもいらっしゃるかもしれません。
「Aクラスは頭が良いんだから仕方ないでしょ。」
「自分は理科が苦手なんだから分からなくてもしょうがない。」
などなど。
でも、ちょっと冷静に考えてみて下さい。
「水かどうかを確かめるために使う試験紙=塩化コバルト紙」
これを覚えるのに頭の良し悪しが関係あるのでしょうか?
理科が苦手だから覚えられないようなことでしょうか?
計算も必要ありません。
閃きも必要ありません。
論理的な思考力も必要ありません。
ただ単に「水かどうかを確かめる試験紙は塩化コバルト紙という」というのを覚えるだけです。
「自分の塾の塾長は山口将志という」を覚えるのと大して変わりありません。
こんなことを言うと、こういう反論が来るかもしれません。
「自分は理科が嫌いだから頭に入らない。理科が好きな人はきっと頭にスッと入るんだ。」
なるほど。
言いたいことは分からないでもないです。
が、しかし、やっぱり冷静に考えて欲しいと思うのです。
「塩化コバルト紙」という名前に対して、「わ~、すご~い、面白~い、これはもう忘れられない!」なんて思う人がどれだけいるでしょうか?
ちなみに私は小学生の時からわりと理科が好きでしたが、「塩化コバルト紙」という言葉に特別な興味が湧いたことはありません。
「水を調べるのに使う試験紙を塩化コバルト紙って言うんだ、ふ~ん。」くらいです。
たぶん、理科が苦手、理科が嫌いといっている人と同じような気持ちだと思います。
理科の点数が取れない、という人がよく言う言葉に
「自分は理系が苦手だから計算がよく分からない。」
「理科の考え方が難しくてよく分からない。」
というのがあります。
でも、本当にそうでしょうか。
私は違うと思うのです。
結局、覚えることを覚えていないから点数が取れないのではないでしょうか。
じゃあ、なんで覚えられないかと言うと、覚えようとする時間が少ないからではないか、と。
覚えようとする必死さが足りないからではないか、と。
理科が好きで好きでたまらない人だって、「塩化コバルト紙」に特別な愛着を湧く人はほとんどいないと思うんです。
理科が得意な人だって、「塩化コバルト紙」を覚えるのに特別な方法なんて使ってないと思うんです。
理科が好きな人、理科が得意な人も「塩化コバルト紙」を覚えるのにやってることは、ただ単に覚えようとして頭に叩き込んだだけ、であることがほとんどでしょう。
つまり、それだけ暗記の時間を使っただけです。
絶対に覚えようと思って必死の気持ちで時間を使っただけ。
逆に「塩化コバルト紙」を覚えられなかった人は、理科が苦手だからでもありませんし、嫌いだからでもありませんし、センスがないからでもありませんし、考え方が分からないからでもありません。
シンプルに覚えようという気持ちが足りないからです。覚えようと努力する時間が足りないからです。
じゃあ、なぜ覚えようという気持ちがたりないのでしょうか?
覚えようとする努力に時間を使えないのでしょうか?
人それぞれの理由があるのかもしれませんが、私が様子を見ている限り、「いつかどうにかなる」という気持ちが大きいのではないかと思うんです。
「入試までまだまだ時間がある。今できなくても、いつか覚えられるでしょ。」
そんな気持ちでいるから、今は「塩化コバルト紙」ができなくても大したことだと思わない。
今回は「塩化コバルト紙」だけの話をしていますが、これは他の多くの単純な知識についても同じではないでしょうか。
「いつかどうにかなる」という気持ちで多くの知識をそのままにしている人と、「今、身につけなければ後がない」と必死に知識を刻み込んでいる人で、大きな差がついてしまっているのだと思うのです。
「頭の良し悪し」
「教科の好き嫌い」
そんなものでつく差なんて些細なものなのだと思います。
大きな差が付くのは、まさに「塩化コバルト紙」の積み重ねです。
こういう細かい知識をいかに着実に積み重ねているかどうかの違いです。
積み重ねるための時間を必死に使っているかどうかの違いです。
そこには「頭の良し悪し」も「教科の好き嫌い」も関係ないのです。
関係あるのは「今、覚えなければならない」という真剣な気持ちと、それを記憶に刻み込むための時間です。
理科が嫌いだから、理科が苦手だから点数が取れないというのは完全な思い込みだと私自身は考えています。
点数が取れないのは、シンプルに地道な努力をしていないからです。
ということでまず、「水かどうかを確かめるために使う試験紙=塩化コバルト紙」を覚えましょう。
それを覚えるのに、センスも工夫も好き嫌いも関係ないと気づいてくれることを願います。