先日、教材会社の育伸社様が開催する埼玉県公立入試に関するセミナーに参加して来ました。
本年度の入試の分析とともに、「令和6年の入試がどうなるのか」など、大変興味深い内容でしたので私の感想と共にお伝えしたいと思います。
※埼玉県の公立入試は、数学・英語2教科に関しては【学力検査問題】と【学校選択問題】に分かれています。【学校選択問題】は上位校入試(22校)で使用され、それ以外の学校では【学力検査問題】が使用されます。
数学
【学力検査】令和5年平均点、出題数と正答率
平均点 | 55.8 |
正答率80~100%の問題数 | 8問 |
正答率60~80%の問題数 | 1問 |
正答率40~60%の問題数 | 9問 |
正答率20~40%の問題数 | 2問 |
正答率0~20%の問題数 | 3問 |
文章記述数(記述問題数) | 4問 |
注目は正答率80%~100%の問題数が8問もあることです。
つまり、ほとんどの受験生がこの8問については「解けた」ということです。
数学の1問あたりの得点は最低でも4点です。
4点×8問=32点。
この32点に関してはほとんどの生徒が取れる点数といってもいいかもしれません。
逆に言えば、この8問中のどこか1問でも落とせば、周りに差をつけられる可能性が大きくなる、ということです。
32点は必ず点数を取ることを前提に、正答率40%~60%の問題でどれだけ正解を積み重ねられるかが勝負の分かれ目になりそうです。
正答率40%~60%の問題の難易度も決して高くはありませんので、学力検査の数学は基礎力がどれだけついているかがポイントだと思います。
令和6年も同様に基礎的な問題が多く出題されるようであれば、数学が苦手な生徒さんでも基礎力さえあれば得点を積み上げられるはずです。
(実際に、山口学習塾の受験生でも数学が苦手であっても入試では70点~80点を取って来た生徒がいます。)
【学校選択】令和5年平均点、出題数と正答率
平均点 | 50.5 |
正答率80~100%の問題数 | 5問 |
正答率60~80%の問題数 | 3問 |
正答率40~60%の問題数 | 7問 |
正答率20~40%の問題数 | 2問 |
正答率0~20%の問題数 | 3問 |
文章記述数(記述問題数) | 5問 |
学校選択の数学といえばかつては「難問ばかりで誰も高得点を取れない…」というテストでした。
しかし、最近はこの傾向は変わって来ています。
高得点を取れる生徒もいれば、かなり低い点数に終わってしまう生徒もいる、差のつきやすいテストになっていると思います。
とくに今年の数学は正答率40~60%の問題が7問もありました。
このくらいの正答率の問題だと、数学が得意な受験生は全問正解の可能性もあります。
逆に数学が苦手な受験生は全て落としてしまう可能性もあります。
学校選択が導入された当初は、「学校選択の数学は難し過ぎて誰も解けないから差がつかない」と言われた数学も、近年の入試ではだいぶ変わって来ているようです。
とはいっても、やはり学校選択問題には超難問も相変わらず出題されています。
今年の入試では最後の問題がそうでした。
なんと正答率は驚異の0.3%…
もはや誰も解くことができてない…と言っても過言ではありません。
学校選択問題で結果を出すには、時間配分、問題の取捨選択などの力も必要になってくるでしょう。
「箱ひげ図」は絶対!
教科書改訂により新たに登場した「箱ひげ図」ですが、多くの都道府県で出題されています。
出題した都道府県の数は以下の通り。
年度 | 出題した都道府県の合計 |
2022 | 20都道府県 |
2023 | 41都道府県 |
2023年はほぼすべての都道府県で出題されました。
2年連続で「箱ひげ図」を出題しなかった都道府県は、東京、石川、奈良の3つしかないそうです。
「箱ひげ図」を中心とした資料の活用の問題は絶対に抑えておかないといけない分野と言えるでしょう。
当然、山口学習塾でも冬以降にしっかりと復習していきます!
英語
【学力検査】令和5年平均点、出題数と正答率
平均点 | 45.8 |
正答率80~100%の問題数 | 4問 |
正答率60~80%の問題数 | 7問 |
正答率40~60%の問題数 | 8問 |
正答率20~40%の問題数 | 4問 |
正答率0~20%の問題数 | 8問 |
文章記述数(記述問題数) | 11問 |
平均点が40点中盤という大変厳しい入試になりました。正答率0~20%の問題が8問もありました。
どうやらこれは問題の長文化が影響しているようです。
今回の学力検査の英語の単語数は約1230語だったそうです。
そして、中学生のリーディングの平均速度は1分間に約50語らしいのです。
1230語÷50語=24.6分です。
つまり、平均的なリーディング能力をもった受験生でも、入試問題を読むだけで約25分かかってしまうということです。
さらに埼玉県の公立入試の英語では毎年13分程度のリスニング問題があります。
25分+13分=38分です。
入試時間は全部で50分しかありません。
問題を解く時間はどれくらい残されているかというと・・・
50分-38分=12分・・・
なんと12分しか問題を解く時間がないのです!!
記述問題が11問もあるテストで解く時間が12分というのはあまりにも厳しい戦いです。
この現実が、今年の英語の平均点の低さに表れているのだともいます。
最後まで解き終わらなかった受験生も多かったのではないでしょうか。
埼玉県のみならず、全国的に長文化は進んでいるようです。
今後も短くなるということは考えにくいとのこと。
英語で点数を取るには「速読」の力をつけるのは必須と言えそうです。
【学校選択】令和5年平均点、出題数と正答率
平均点 | 56.7 |
正答率80~100%の問題数 | 10問 |
正答率60~80%の問題数 | 5問 |
正答率40~60%の問題数 | 8問 |
正答率20~40%の問題数 | 6問 |
正答率0~20%の問題数 | 2問 |
文章記述数(記述問題数) | 14問 |
数学の学校選択問題と同じく、正答率40~60%の問題数が多いです。英語が得意な生徒と、英語が苦手な生徒で点数が開きそうですね。
ただし、英語の学校選択問題の場合は正答率80~100%の問題も10問ありますので、まずは基礎的な内容で絶対に落とさないことが重要です。
学校選択問題は当然のことながら、学力検査問題よりも難しい内容になります。長文の英単語数も増えます。
その中にあって、なんと文章記述数(記述問題数)が14問もあります。
学力検査以上に速読の力が求められることでしょう。
「100語~200語の短文をいくつも読んで英語を速く読む訓練を積むのがいいのでは?」とセミナーでは話が出ていました。(現在、この部分について英語担当の矢田と指導内容を検討中です。)
理科
令和5年平均点、出題数と正答率
平均点 | 58.2 |
正答率80~100%の問題数 | 7問 |
正答率60~80%の問題数 | 8問 |
正答率40~60%の問題数 | 8問 |
正答率20~40%の問題数 | 2問 |
正答率0~20%の問題数 | 3問 |
文章記述数(記述問題数) | 7問 |
理科に関してはそれほど大きな変更点や注意点はないようです。ただ数学、英語で見てきたように問題の「長文化」は理科でも進んでいます。
見開き2ページの文章(会話文や資料)に対して、問題数が2,3問だけ…など、長い文章、複数の資料から必要な情報を抜き出す力が必要とされているようです。
ちなみに正答率0~20パーセントの問題3問のうち2問は計算問題でした。
つまり、理科の計算問題は多くの受験生ができなかった、ということです。
計算問題の正否ではあまり差がつかなかったと言えそうです。
「理科は計算問題が苦手…」という受験生も多いかもしれませんが、仮に計算問題ができなくても知識の部分で十分にカバーできるといえるでしょう。
社会
令和5年平均点、出題数と正答率
平均点 | 64.1 |
正答率80~100%の問題数 | 5問 |
正答率60~80%の問題数 | 13問 |
正答率40~60%の問題数 | 9問 |
正答率20~40%の問題数 | 3問 |
正答率0~20%の問題数 | 0問 |
文章記述数(記述問題数) | 6問 |
社会は昨年と比べると平均点がおよそ11点上がりました(令和4年の平均点は52.9点)。記述式の問題を中心に「知識があれば分かる」という内容が多かったようです。(令和4年は、問題文を読んでその場で考えるという、知識に頼ることができない問題がいくつかありました。)
その結果、正答率0~20%の問題が1つもありませんでした。
正答率40~60%の問題数が9問。正答率60~80%の問題数が13問。
この22問に関しては、しっかり社会の勉強をして来た受験生にとってはそれほど難しく感じなかったのではないでしょうか。
埼玉県公立高校入試では社会、理科で得点を取れる受験生は強いです。
特に社会は勉強量が得点に結びつきやすい教科ですので、万全の備えをして欲しいところです。
国語
令和5年平均点、出題数と正答率
平均点 | 57.1 |
正答率80~100%の問題数 | 2問 |
正答率60~80%の問題数 | 9問 |
正答率40~60%の問題数 | 8問 |
正答率20~40%の問題数 | 6問 |
正答率0~20%の問題数 | 0問 |
文章記述数(記述問題数) | 8問 |
国語は年々記述問題数が増えています。
今年は8問、得点にして45点分です。
100点のうちほぼ半分が記述式の問題となってしまいました。
こうなると、「選択肢を運任せで…」というのは全く通用しないですね・・・(;^_^A
(もともと大事な高校入試を運任せで受ける人もいないと思いますが。)
記述式での解答が多いということは、文章を読む力だけでなく、文章を書く力も必要になっているということです。
普段の学習において、国語に限らず「解答までの筋道をしっかりと考えて書く」という意識が必要だと思います。
今後に向けて
全ての教科において「問題の長文化」と、「資料を利用する問題の増加」が見られます。
多くの情報の中から、必要な情報とそうではない情報を取捨選択する力を鍛える必要がありそうです。
それには、普段の学習から文章を正しく読む姿勢は必須と言えます。
また、表やグラフなど資料を読み取る問題もどんどん増えて来ています。
「なぜこういう数値になるのだろうか?」「この表は一体に何を言いたいのだろうか?」
そういう疑問を常に持って学習に臨んでほしいと思います。
今回セミナーに参加して、改めて「一問一答的な知識では入試には通用しない。」「文章を正しく読み、入試本番のその場で考える力が求められている。」ということを感じました。
ただ思考力・判断力・表現力というのは、基礎的な知識がなければ鍛えることはできないとも思います。
従来型の知識を詰め込んでいく学習も依然として重要なのは間違いないと思います。
確実な知識に支えられた思考力・判断力・表現力が求められているのかもしれません。
この変化の中でも、しっかりと結果を出せる学習塾として、われわれ自身がまず意識を変えていかなければいけないと強く思いました。