怪談スクエア

 突然ですがみなさん、「スクエア」という怪談(怖い話のこと)をご存じでしょうか。スクエア(square)は正方形を意味する英単語です。

 ある山岳部の五人の学生が、登山をしに行きました。午前中は天候が良かったものの、午後から急に悪化して、やがて吹雪が吹き始めました。途中、一人の学生が落石にあって亡くなってしまい、他の学生がその遺体を背負って移動しました。

 彼らは山小屋を見つけ、吹雪が収まるまでその場所で待機しようとします。しかしその山小屋は無人で、電気も通っていません。部屋は寒く、さらにかなしいことにまっくらです。四人は震えて夜を過ごすことになりますが、眠ってしまったら、最後、もう二度と目を覚ますこともありません。

 眠らない方法を考えた彼らの内の一人が、ある方法を考えます。

 その方法とは、四人がそれぞれ部屋の四つの角に立って、壁に手を突きながら移動をし、ほかの人の肩をリレー形式で叩いていくというもの。最初の一人が、二人目のところへ行って肩を叩き、肩を叩かれた二人目は三人目のとこへ行って肩を叩き……と繰り返していきます。そうすれば移動をし続けることになり、眠らずに済みます。

 この方法で彼らは夜をやり過ごし、無事に下山することができました。

 これが「スクエア」という怪談ですが、どこにおかしい要素があったか、わかるでしょうか。

 実際に部屋の角に立って四人で実演してみればすぐにわかりますが、四人で肩を叩いて一周することはできません。最初に移動した一人目の学生の肩を、四人目の学生が叩くことができないからです。正方形の部屋の四つの角をリレー形式で回るのに必要な人数は、最低でも、五人です。

 もうおわかりですね。お話の冒頭で亡くなった学生がいました。その人が四人のリレーの穴を埋めて、ほかの仲間が下山できるように協力した、ということです。

 この話が本当にあったとは思いませんが、ただ一つ正しいことがあります。

 それは、身体を動かさなければ眠ってしまう、ということです。

 最近は教室も暖房が利いていて、ものすごく眠気を誘われてしまうことがあります。そうなった場合、ひたすらに何かを書いてください。書く内容はなんでもかまいません。計算式でも、英単語でも漢字でも、とにかく書いてみることをおススメします。眠ってしまって悲劇的な結末を迎えることは、雪山でもテストでも同じです。眠らないように注意してください。

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