私は大学生の頃、政治学を勉強していました。
という始まり方をすると「また堅い話か…」と記事を読むのを嫌になる生徒さんもいそうで恐縮ですが・・・
その頃にカントという人が書いた『純粋理性批判』という本を読みました。
いや、「読みました」というのは嘘で、実際はほんの数ページめくっただけで終わりました。
情けない話です。
というのも、この本はとてつもなく難しい本だったのです。
書いてある内容がさっぱり分からなかったんですね。
カントが書いた別の本、『永遠平和のために』という本を大学の先輩の力を借りながら読み解いた私は、その先輩から「今度は『純粋理性批判』に挑戦しよう。山口君、ちゃんと予習して来てね。」という有難くないお誘いを受けてしまっていたのです。
ただ、この『純粋理性批判』という本は、当時の私には本当に2,3行読むのにも苦労する内容だったので、まるで頭に入らなかったんです。(今の私でも頭に入らないと思いますが…)
一応政治学をそれなりに勉強していた私ですが、この本に関してはまるで面白みを感じませんでした。(面白みを感じるまで勉強してなかったからなのですが…)
後日、先輩から「まずここまでどういう内容だった?」みたいなことを尋ねられても、内容を全く覚えてなかったのです。
たしか難解な言葉が並んでいた本だったと思いますが、意味も分からなかったのでその言葉自体も覚えられなかったんですね。
(「覚えられなかった」という記憶だけは未だにこびりついていますが。先輩には謝りました、「自分には無理です、ごめんなさい。」と。)
私の苦い思い出話からいきなり皆さんのテスト勉強の話に移ります。
よく「社会は暗記の教科だ。暗記さえできれば点が取れる。」という話がありますよね。
そういう側面は確かにあると思います。
でも、その「暗記さえできれば」が意外に難しかったりするんです。
たとえば語句の意味や歴史的な背景を無視して、用語を丸暗記しようとします。記述の答えを丸暗記しようとします。
この時の皆さんの気持ち、分かる気がします。
私がカントの『純粋理性批判』に向かった時と同じだと思います。
訳が分からない状況で、何でもいいから覚えようとする。
先輩から質問されて何も答えられないと恥ずかしいから、形だけでも覚えようとする。
全く覚えられない!!
そもそも意味が分からないから、気持ちが「覚えよう!」と前向きになれない。
意味が分からないから、知識が結びつかないでどんどん頭の中からすり抜けてしまう。
そんな状態だと思うのです。
たしかに「暗記すれば点が取れる」という教科や内容はあります。
でも、ゼロからの丸暗記というのは覚えるのにも時間がかかるし、何より頭に残らないんですよね。
今回の期末テスト勉強を前に、数名の生徒と面談をしました。
その中で「前回の中間テストのときは、社会の暗記ができなかった」という生徒が数名いました。
その生徒たちには面談の中で、「全く意味の分からない言葉を覚えるのはさすがに厳しいぞ?まず自分の言葉で何となく説明できるくらいまでは意味を抑えておこう。だから分からないことがあったら、遠慮なくどんどん質問してね。」と伝えました。
期末テスト勉強中に「この言葉の意味って何ですか。」「なんでこういうことが起こったんですか。」など、今までよりも質問が多くなった生徒もいました。
私の方から「六波羅探題ってなんだっけ?自分の言葉で説明できる?」など、質問を投げかけることもありました。
そして期末テストの結果が返ってきて…
社会だけで30点以上アップした生徒もいました!
自分自身で課題を見つけ、そしてその課題を克服するため妥協せずに一語一語の意味を捉えていってくれたのだと思います。
「意味が分かれば暗記もできるんだ。これからはまず最初に言葉の意味を確認してから覚えよう。」
そういう意識が今回のテスト勉強で身についてくれていれば、とても嬉しく思います。