ソーカル事件

 突然ですが、1995年代に起こったソーカル事件をご存じでしょうか。

 事件といっても特に人が傷つけられたということはなく、端的に概要をいえば、物事を評価するのは簡単ではないということを示したのが、ソーカル事件です。
 ソーカルはアメリカ人の学者です。彼はとある論文を『ソーシャル・テキスト』という学術誌に投稿しました。

 論文のタイトルは「境界を侵犯すること:量子重力の変換解釈学に向けて」というもの。

 何を言っているのか、よくわかりませんね。

 しかし「何を言っているのかよくわからん」と思った方。その感覚は適切です。

 実はこの「境界を侵犯すること:量子重力の変換解釈学に向けて」という論文に書いてあるのは、でたらめな数式や物理学用語を並べただけの意味のない内容でした。

 ソーカルはこの意味のない論文を投稿して、『ソーシャル・テキスト』の編集者たちがでたらめであることを見抜けるかどうか、試そうとしました。

 結局、『ソーシャル・テキスト』は「境界を侵犯すること:量子重力の変換解釈学に向けて」という論文を掲載してしまい、論文を全然読めていなかったことを示してしまいました。

 文章を読むというのはそう簡単な行為ではありません。書いてあることをそのまま読むには、ある程度の訓練が必要です。

だからこそ、国語という教科を学校で教えているのでしょうし、読解の問題に苦戦したりします。
 ちゃんと内容を読まずに他人を批判することもあるでしょうし、逆に好意的な印象だけで内容を不当に高く評価することもあります。SNSを見たら、それが一目瞭然ですね。

 評価をすることは、そもそもその評価をする人間の能力が問われます。何かを判断するときには、その判断が適切な評価軸によるものなのか、今一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

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