サッカー戦争

昨夜のサッカーワールドカップはすごかったですね。

私は帰宅後、ちょうど後半開始から観戦したのですが、日本代表がドイツ代表を破る歴史的大勝利に感動しました。

などと書くと、サッカーに興味がない人たちから「ま~たサッカーの話かよ。」と言われてしまいそうですが・・・

じつは私も普段はサッカーにそれほど興味がある訳ではありません。

日本代表の選手の名前も、長友選手と吉田選手と久保選手くらいしか知らなかったですし。。

完全ににわかファンです。(※にわかファン=大して知りもしないのに突然ファンと公言する人)

にわかファンなので、昨夜の試合やサッカー日本代表については何も語れません。

今日はサッカーにまつわる別の話をしようと思います。

「サッカー戦争」と呼ばれる出来事があります。

1969年にエルサルバドルとホンジュラスという二カ国間で実際に起きた戦争です。

戦争が起きる前後の時期と、サッカーワールドカップ北中米カリブ海予選の時期が重なったので、このような名称で呼ばれることになったそうです。

戦争の原因は二カ国間での経済格差の問題や移民問題などが絡んでいます。それらを書いていくと長くなりますので、ここでは省略したいと思います。

1969年6月8日、経済問題や移民問題で二カ国の対立が深まる中、ホンジュラスの首都テグシガルパでエルサルバドル対ホンジュラスの第1戦が行われました。

この第1戦の前夜、エルサルバドル代表が宿泊するホテルの外にホンジュラスサポーターが大量に押し寄せ、一日中車のクラクションを鳴らしたり、大声で歌を歌ったりしてエルサルバドル代表を疲弊させたそうです。

そして、第1戦の結果は1-0でホンジュラスの勝利。

この試合後、敗戦のショックからエルサルバドルサッカーの熱狂的ファンである18歳の女性が自殺をしてしまいました。

1969年6月15日、第2戦はエルサルバドルの首都サンサルバドルで行われました。

今度は前回の試合の逆で、ホンジュラス代表が泊まるホテルの周りをエルサルバドルのサポーターが囲みます。

そして、ホンジュラス代表を疲弊させるため、ホテルの窓を割り、腐った卵やネズミの死骸などを投げ入れたそうです。また第1戦の敗北を苦に自殺した女性の肖像を掲げ、ホンジュラス代表を非難し続けるといったことまで行ったそうです。

ホンジュラスから応援に駆け付けたホンジュラスサポーターのうち2名は、このようなエルサルバドルの暴徒たちに襲われ亡くなってしまいました。

第2戦の結果は0-3でエルサルバドルの勝利。

1勝1敗となった両国は、1969年6月27日第3戦をメキシコのメキシコシティで行いました。

両国のサポーターが衝突しないように、メインスタンドとバックスタンドに分離して入場させ、両国サポーターエリアの間には、催涙ガス銃を装備した機動隊員を配置させるという厳戒態勢で試合が行われたそうです。

結果は3-2でエルサルバドルの勝利。

日本におけるスポーツのイメージだと死力を尽くして戦った両者は、その後、互いの健闘をたたえ合い仲良くなる…という結末もありそうです。

しかし、この時のエルサルバドルとホンジュラスの間にそれはありませんでした。

両国のサッカー代表が第2戦を戦った後(ホンジュラスが負けた試合後)、ホンジュラスに住んでいるエルサルバドル移民が襲撃を受け、本国に避難するという事態が起こっていました。

そして、エルサルバドル政府は第3戦の前日、ホンジュラスとの国交(国同士のつきあい)を断絶します。

ホンジュラス政府も第3戦が終わった後、エルサルバドルとの国交を断絶します。

そして、1969年7月14日に実際に軍事衝突が起き、戦争へと突入してしまうのです。(この戦争は7月19日には終結しました。)

われわれ日本人にとってスポーツは爽やかで気持ちのいいものだというイメージがありますよね。

純粋に応援して、そして感動をもらうもの。

まさに昨夜の日本対ドイツ戦がそうでした。

しかし、国によっては政治的な問題と絡んで、暴力的な対立に発展してしまうこともあるんですね。

この戦争自体はサッカーの勝敗が直接引き金となったわけではありませんが、経済問題や移民問題などとサッカーへの熱狂的な感情が混ざり合って死者が出るまでの衝突(暴動)が発生してしまった・・・と言えるのかもしれません。

昨夜はサッカー観戦の後、少し夜更かしをしてある番組を見ていました。

日本でも代表監督の経験があるイビチャ・オシムさんの番組でした。

民族間での対立が激化する1990年代のユーゴスラビア(今はもうこの国はありません)。

このユーゴスラビア代表監督を務めたオシムさんが、対立する様々な民族から代表選手を集めて奮闘する記録が流れていました。

民族差別によって代表を追われる選手や、内戦中、戦闘が止まる一時を狙って命がけでサッカーの練習をしていたエースストライカーの少年時代の話など、日本では想像できない話がたくさん出てきました。

そんな話を聞いていると、昨夜のサッカー観戦に改めて感謝の気持ちを強く持ちました。

経済的な問題や民族的な問題など、社会的、政治的な問題抜きで、平和に、安全に、純粋にスポーツを応援し、そして素直に感動をもらえること。

それは当たり前のことではないんだな、と。

今回の記事は、小中学生の皆さんには少し硬い話になってしまったかもしれません。

申し訳ございません!

昨夜は大きな感動をもらうとともに、「自分が置かれている環境がとても幸せなものなんだ。」ということに気が付くことができたとてもいい夜でした。

TOP