ゲームの中の文学作品

 突然ですがみなさん、ゲームは好きですか? 私は大好きです。

 最近は「ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム」というゲームをずっとやっています。

 前作の「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」も延々と遊べるほどにおもしろく、まれにみる傑作だと思っていたのですが、今作もそれに並ぶような、非常に完成度の高いゲームになっています。

「ゼルダの伝説」シリーズはパズルの要素が強い作品です。「ティアーズオブザキングダム」にもいろいろなバリエーションの謎解きが配置されています。

 とてもおもしろいのは、いっけん、難解なパズルに見えても、どこかに必ず、製作者は何らかの攻略方法を忍び込ませていることです。

 やみくもにものすごいパズルをつくることも、できなくはないはずです。しかしそれをやったなら、ゲームのバランスが壊れてしまいます。

テストも、最初から最後まで難しい問題だけで構成されていたら、どうしようもありません。最初は簡単な問題、そしてステップアップしていって、最後に難問が待ち構えている。難しい問題だけのテストより、そういった問題構成のほうが良質だと言えます。

 少し話がそれましたが、「ゼルダの伝説」というタイトルの「ゼルダ」は、ゲームに登場するお姫様の名前です。この「ゼルダ」には元ネタがあるのですが、ご存じでしょうか。

 アメリカに、スコット・フィッツジェラルドという小説家がいました。『グレート・ギャッツビー』という偉大な作品をのこし、後世の作家に大きな影響を与えました。日本の作家・村上春樹もフィッツジェラルドの影響下にあります。

 このスコット・フィッツジェラルドの妻の名前が、ゼルダという名前なのです。

「ゼルダの伝説」の製作者は、この人の名前を借りて、ゲームを作りました。

 フィッツジェラルド夫妻は、一時はフランスのパリできらびやかな生活を送っていました。しかしのちに、アメリカの恐慌(1930年あたりの世界恐慌のこと)のあおりを受けて、あまりいい晩年をおくることができませんでした。『グレート・ギャッツビー』もフィッツジェラルドの死後に評価された作品です。

 そんな因縁を持つ「ゼルダ」の名前が、「伝説」という言葉とともに現代に残っていることに、なんとなくしみじみと感じるものがあります。実際、ゼルダ・フィッツジェラルドは一時、時代の寵児(ちょうじ)として非常にもてはやされた人物です。その時代を生きる人たちにとってフィッツジェラルド夫妻は、英雄みたいに映ったことでしょう。

 死後数十年が経過しても残された名前は、違った文脈で受け入れられ、いまなお愛され続けています。「ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム」はリンクという主人公を通して広大な大地をめぐり、天空をかけ、地底を探検し、はてしない冒険を楽しめる奇跡のようなゲームです。普段ゲームをやらない方でも、絶対に楽しめます。余裕があるときに、ぜひプレイしてみてはいかがでしょうか。 (最後に、前作「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」のとあるamazonレビューのリンクを載せたいと思います。このレビューはのちに「ティアーズオブザキングダム」のCMのテーマになりました)

https://www.amazon.co.jp/review/R3HOFXJ0XCN4F4

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