先日、教材会社(エデュケーショナルネットワーク様)より、2022年の公立高校入試についての資料を頂きました。
全国の公立入試を分析し、どういった傾向があったのか、資料に細かくまとまっていました。
本日の記事では、その冊子の内容について私(山口)なりにまとめたものを書きたいと思います。
抜粋問題などは冊子通りではなく、埼玉県のものから多く引用しています。
数学
数学の傾向
- 新出内容の「四分位範囲と箱ひげ図」は22道県で出題。初年度から記述を課す県もあり。関数は解くだけでなく”読み取る”、”活用する”が重視されるように。
- 会話形式・日常生活を題材とした新傾向問題の導入は県によって大きく異なる。
- 「四分位範囲と箱ひげ図」は代表値と絡めた出題が多い。
数学の注目問題
長野県 問3
(2)は「関数」とは何なのか。
Ⅱ(1)は二次関数のグラフの特徴を理解しているか。また、「比例定数」「絶対値」「変化の割合」「双曲線」などの言葉の意味を知っているか。
意味まで考えずに数学をパターンで解いて来ている生徒には厳しい問題だと思います。
普段漠然と使っている言葉の意味を知っているか、確認しておくことが大事になってきます。
和歌山県 大問2
資料の整理の問題がここまで大きく出題されることも今まではほとんどなかった気がします。
「『データの活用』を重視していく」という新学習指導要領の方針をまさに表している問題と言えそうです。
「資料の散らばりと代表値」「四分位範囲と箱ひげ図」このあたりは、今までの受験対策のように「とりあえず」くらいでは済まされないかもしれません。
「必ず出題される。しかもそれなりに大きな配点になる可能性もある。」という認識が必要です。
理科
理科の傾向
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中3新出内容の「ダニエル電池」は15都府県で出題。共通テストの影響か、”完答で正解”や”組み合わせの選択肢”の問題が10問を超える県も続出。(選択問題の難化)
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設問がほぼ一問一答の従来型の入試と、積極的に新傾向を採用している入試があり、県ごとの特徴の違いが顕著。(埼玉県は新傾向を取り入れる傾向)
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記号問題中心の県では選択肢の数で難化を図るケースが多く、6択や8択も増えている。
理科の注目問題
群馬県 大問4
ダニエル電池は新出内容にもかかわらず、知識をしっかり確認する問題です。
教科書改訂による新出内容は「初年度では軽く触れるだけ」というパターンが今までは多かったですが、今回の入試では改訂初年度からしっかりと知識を問う問題が現れました。
「この範囲は初年度だから出題されたとしても簡単な問題だろう」という認識は通用しなくなった、ということかもしれません。
埼玉県 大問2
知識の有無を問う問題ではありません。完全に読解力を試されています。
「太陽暦では1年で0.24日ほど公転周期と差ができる。つまり4年で、0.24日×4年=約1日の差ができる。よって、4年に1回、1日余計に入れることで調整できる。
太陰暦で考えると、29.53日×12か月=354.36日で1年となり、実際の公転周期と365.24日ー354.36日=10.88日の差が1年でできてしまう。つまり、3年間で10.88日×3年=32.64日の差ができてしまうので太陰暦における13番目の月を3年に一度入れると、32.64ー29.53=3.11日の差で抑えられる。これを3年間で割ると3.11÷3=1.03日の差。つまり、年平均1日程度の差に抑えられる。」
試験本番で問題を読み、ここまで考えが及ばないといけないのです。
理科や数学にも読解力が必要になって来ていると言えそうです。
最上位の学校を目指す生徒たちは単純な知識量だけでは通用しにくくなっていると言えるでしょう。
英語
英語の傾向
- 新出内容「仮定法」「現在完了進行形」「原形不定詞」は8割以上の都道府県で出題。大半は文中での使用となったが、語順整序や空所補充での出題も。
- 埼玉県の学校選択問題では、ほとんどの新出内容が問題として出された。
英語の注目問題
埼玉県(学校選択)大問2の2
埼玉県(学校選択)大問3の3
現在完了進行形の語順整序問題です。関係代名詞と絡めて出題されたので、受験生たちは余計に難しく感じたのではないでしょうか。
埼玉県(学校選択)大問3の4
仮定法の空欄補充問題です。後ろのwould beで仮定法だと気づかなければ現在形のareを入れてしまうかもしれません。そもそもこの文が仮定法だと気づかなければ、文章内容を誤解してしまう生徒もいるでしょう。
このように埼玉県の学校選択問題では、英語の新出内容の全てが出題されました。しかも、しっかりと知識として定着できていないと正答にたどり着くのが難しい形での出題でした。
来年以降も、同様に新出内容の文法の出題も当たり前にあると意識しなければいけません。
社会
社会の傾向
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昨年出題が見送られた「国際社会の諸課題」を多くの県で出題。SDGs関連の問題は、今年も「二酸化炭素排出量制限」に関する記述問題が目立った。
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一問一答形式で用語を答えさせる問題は減り、写真や図版、グラフなどの資料の読み取りとあわせて知識を問う問題が増えた。
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県によって大きく異なるのが資料の使い方。資料が解答のヒントになる場合と、資料についての知識を問う場合があり、後者は難易度が高め。
社会の注目問題
埼玉県大問5の4
需要と供給について意味を理解している生徒であれば、それほど難しい問題ではなかったかもしれません。
しかし、一問一答的な丸暗記に頼った勉強だと表やグラフを絡めた途端にできなくなる可能性はありそうです。
今年の埼玉県の社会では選挙制度の問題に関しても、あえて図を絡ませていたり、出題に工夫が見られました。
広島県 大問1
知識ではなく、資料を読む力、課題解決を考える力が問われている問題です。
世の中にはどのような課題があるのか、その課題のためにAIがどのように使われているか、など日常生活の中で考える訓練を積んでいないと、このような問題では手が止まってしまうかもしれません。
国語
国語の傾向
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国語は他の教科に比べ変化はさほど大きくない。
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問題文や作文で扱われるテーマが情報リテラシーなど、現代社会の課題についてのものが増えてきている。
※国語は注目問題を割愛します。
まとめ
勉強内容が増えた分だけ入試に出る問題が増えた。そして、一問一答式の丸暗記のような勉強で通用する部分が減ってきた。
そのような印象を受けます。
要するに「公立高校入試がより難しくなっている」ということです。
でも「資料を読んだり、自分の考えを書いたり、思考力や表現力が問われる問題が増えたのか…。じゃあ、暗記の勉強に使っていた時間をそういう力を養う訓練に使わないといけない!」と過度に不安になる必要はないと思います。
結局のところ、思考力も表現力も確かな基礎知識がなければ得ることができません。思考力も表現力も、基礎知識の量に支えられていることがほとんどだからです。
過度に不安になり、特別な勉強をする必要はないでしょう。ただ、「これからの受験生は今までの受験生よりもたくさんの知識をより正確に身につけていかなければいけない」ということは言えるかもしれません。
かつては「この分野は公立入試ではほとんど出ない。」という内容がありましたが(とくに理科で)、今後はそんなことはないと思います。
何が出るか分かりません。学校で習ったこと、教科書に出ていることなら何でも出題されると思って、目いっぱい努力することが必要です。
エデュケーショナルネットワークの冊子で取り上げられていた問題、そして私自身が気になった問題をいくつか抜粋しました。これらの問題を見て「本当に必死に勉強しないとマズい!」と受験生たちが覚悟を決めてくれれば、この記事を書いた甲斐もあります。
受験生たち、大変なこともたくさんあると思いますが、志望校に必ず入れるように受験勉強に臨みましょう!