7月10日(日)…
何の日でしょうか?
「蘇我入鹿が暗殺された日!!」と答える方がいたら歴史マニア確定ですが…
今回の記事は、歴史マニアの人向けの記事ではないので、より身近な出来事に焦点を当てたいと思っています。(歴史マニアの方々、申し訳ございません。)
そう第26回参議院選挙投開票日です!
興味ない?
たしかに小中学生は投票権がないので、その気持ちも分かります。
「どうせまた勉強の話だろ?」
そう思って、この記事のページを閉じようとしているそこの君、ちょっと待ってください!
勉強の話では・・・ありますけど、試しにもう少し先まで読んでみて下さい、お願いします。
まず、歴史を学んできている中3生は「第26回参議院選挙」という言葉に違和感を持って欲しいのです。
「第26回」…えっ意外に少なくない?と。
ちなみに日本には2つの議院がありますが、一つは今回選挙が行われる参議院。もう一つは衆議院です。
では、衆議院選挙は今までに何回行われているか?
答えは49回。
参議院の方がなんと23回も少ないんですね。
「衆議院議員の任期は4年、参議院議員の任期は6年。だから衆議院の選挙の方が多くて当たり前。しかも衆議院は解散もあるでしょ。その分も衆議院の選挙の方が多くなって当たり前。先生、何言ってるんですか?」
そのように答えられる中3生はなかなか勉強が進んでいると思います!
・・・が、参議院議員の任期は6年でも、実は3年ごとに半分ずつ改選しているんです。
参議院選挙の場合は2016年に選ばれた議員は今回選挙の対象になりますが、2019年に選ばれた議員さんたちは今回の選挙の対象にはなりません。
こんなイメージです☟
つまり、参議院議員の任期は6年でも、選挙は3年ごとに行われるということです。
そう考えると、やはり「第26回」というのは少ないと感じませんか?
「いや、衆議院は解散があるから…」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなに頻繁に「解散!」「解散!」という話を聞くでしょうか?遠足じゃあるまいし、そんなに頻繁に「解散」という言葉を聞いていたら、選挙ばかりでわれわれ国民も困っちゃいますよね。(国政選挙には多額の税金が使われていると聞きますから…)
では、なぜ参議院選挙の方がこんなにも回数が少ないのか?最初の問いに戻ってしまいますね。。
答えは第1回の開始年月日を確認すると分かります。
第1回衆議院選挙は1890年7月1日です。
一方、第1回参議院選挙は1947年4月20日です。
答えはいたって単純な話でした。参議院選挙の方が最近始まったのです。参議院の方がだいぶ新しいのですね。
「な~んだ、つまらない話だな。衆議院は昔からあって、参議院は途中からできたってだけの話じゃん。」そう言いながら、このページを閉じようとしている人、もう少しだけ読みましょう。お願いします!!
実は参議院ができる前、参議院の前身となる議院が日本にはあったのです。その名も「貴族院」。
名前の通り、貴族が議員となって政治を行う議院です。
「じゃあ、日本に貴族がいたってこと?」そう思う人もいるかもしれません。
いたんですね。「華族」と呼ばれる身分があったのです。
その出身者たちが選ばれて政治を行うのが貴族院でした。
ちなみに貴族院には衆議院のような選挙はありません。華族(貴族)であれば身分によって自動的に議員になる人もいれば、華族同士でお互いに選ぶこともあったそうです。また、貴族院とは言いながらも、華族(貴族)以外の人でも、学識がある人などが選ばれることはあったそうです。
そして、貴族院議員の任期は7年、もしくは終身。終身とは一度議員になったら、死ぬまでずっと議員でいるということです。スゴイですね。
さて、そんな貴族院がなくなり、1947年には第1回の参議院選挙が行われたわけですが、なぜでしょう?なぜ、貴族院はなくなったのでしょうか?
皆さんの周りを見渡せば答えは簡単に分かりますよね?
こんな人☟、皆さんの周りにいませんよね?
そう、日本に貴族(=華族)がいなくなったからです。
1945年、日本は太平洋戦争に負け、アメリカの主導のもと、それまでの政治体制が一新されました。「民主化」されたんですね。そして、その2年後、1947年5月3日に新しい憲法が日本にできます。『日本国憲法』です。
この『日本国憲法』には「法の下の平等」という決まりがあります。平等の原則のもと、特権階級である華族は消滅したわけです。
ちなみに「特権階級」とは言いつつも、実際はお金に困っている華族もいたらしく、「金はないけど貴族としての体面を保つために金を使わないといけない…」という苦しい生活から、ついには華族の身分を返上する人たちもいたそうです。
選挙の話からどんどん歴史の話になっているので、参議院選挙の話に戻しましょう。
日本の参議院選挙には2種類の選挙があります。
「選挙区選挙」と「比例代表選挙」です。2つの選挙制度について詳しく説明すると長くなりますし、そろそろ「勉強みたいな文章で飽きて来た…」という人もいるでしょうから止めておきましょう。
「選挙区選挙」については、すでに皆さんよくご存じのはずです。学校で学級委員を選ぶときなどにやっている選挙です。皆さんの学校で学級委員を選ぶ場合は、各クラスから1名または2名を選ぶと思います。各クラスで「学級委員になりたいぞー!」と手を上げた4,5名の中から、1,2名を投票で選ぶと思います。それと一緒です。
これが参議院選挙の場合、1年1組、2年2組などのクラスが「都道府県」に当たります。1年1組から「学級委員になりたいぞー!!」という人が5人名乗りを上げるように、今回の「埼玉県選挙区」では15人の人が「参議院議員になりたいぞー!!」と名乗りを上げています。そして、その15人の中から、われわれ埼玉県民の有権者たちが4人を選ぶわけですね。(ちなみに有権者とは選挙権を持つ人たちのことで、日本では18歳以上の人たちです。)
さて、この「選挙区選挙」。
かつて、恐ろしいことをしたアメリカの政治家がいます。
その名を、エルブリッジ・ゲリー。マサチューセッツ州知事。この人は1812年の選挙で、自分の仲間たちを当選させるためにとんでもないことをしたそうです。
お金をばらまいて票を不正に買った?それとも、対立候補者たちの悪口を言いまくった?
違います。そんなことでは名前は歴史に残っていないと思います。
なんと、選挙区の形を自分たちに有利なように変えてしまったのです!
下の図を見て下さい。
赤と青がそれぞれ対立している政党の支持者たちを表しています。政党というのは、日本でいうと自由民主党(自民党)や立憲民主党などのことを言います。(上の図は、たとえば赤は立憲民主党を応援する有権者、青は自民党を応援する有権者という感じです。)
左の区割りだとそれぞれの選挙区で赤も青もどちらが勝つか分かりません。
もし、エルブリッジ・ゲリーが青の仲間だった場合、下手をすれば4つの選挙区ですべて赤に負けてしまう可能性もあります。自分の仲間である青の仲間が全員落選する可能性もある訳です。ゲリーとしては、それは困る訳です。
そこで、ゲリーは選挙区を上記の右のように変えてしまいました。すると、1つの選挙区では赤に負けてしまいますが、残り3つの選挙区では青が確実に勝ちますよね。つまり、ゲリーの仲間が多く議員に当選するわけです。なんと強引な手法でしょうか…
「自分に有利なように」選挙区を変えちゃうわけですから、選挙区の形はヘンテコになってしまう可能性があります。しかし、ゲリーはそんなことはお構いなしに、ただ自分に有利なように選挙区を変え、実際ヘンテコな形の選挙区ができ上ったのです。
こんな感じで☟
ヘンテコな形になった選挙区の一つが、あたかも伝説上の生き物、サラマンダーのようになったという話です。
ゲリーとサラマンダー、合わせてゲリマンダー・・・
「何ふざけたこと言ってんだ?」と思ったそこのアナタ。
「ゲリマンダー」と検索してみてください。ふざけているようで真面目に使われている言葉なのです。(私は大学生の頃、政治学を学んでいましたので、このゲリマンダーという言葉を真面目に勉強していました。)
もう一つ面白い言葉を挙げておきます。
「ハトマンダー」
同じように自分に有利なように選挙区割りを変えようとしたと言われる人がいたのです。
しかも、日本に。
1956年、鳩山一郎内閣が自民党に有利なように選挙区割りを変えようと、公職選挙法改正案を提出したのだそうです。それをゲリマンダーになぞらえて、ハトマンダーと呼んだそうです。(ハトマンダーは結局、廃案になったとか。)
小中学生の皆さんにとっては、「政治とか選挙は堅苦しいだけ」というイメージがあるかもしれませんが、案外面白い話が転がっていたりします。
この記事を読んで、ちょっとでも政治に興味を持ってもらい将来皆さんが選挙に行ってくれれば、記事を書いた私としても有難い話だな、と思います。
大変長い記事になってしまい申し訳ございませんでした…
最後まで読んでくれた方々、大変感謝申し上げます。。