今でこそ「塾長」なんて言われていますが、私にも会社員時代がありました。
どこにでもいる世間知らずの青二才。
それが会社員時代の私でした。
若いころの私はそれはもう生意気だったと思います。
言いたいことは何も考えずに言う。
上司が言ったことにも平気でノーを突き付ける。
全くもって上司のKさんや、チームには迷惑ばかりをかけ続けていた若者だったと思います。
そんな青二才の私は、上司のKさんに対してあれやこれや意見を言っては「Kさんが聞いてくれない」「Kさんが理解してくれない」という場面がたびたびありました。
そのたびに私は、「なんで分かってくれないんだよ、この人は!ダメな上司だな!」と内心思っていたんです。
自分のことを理解できないダメな上司、私はそういう気持ちでいたんですね。
でも、ある日、青二才の私は気づきます。
Kさんのバッグが昨日と全く同じ場所に全く同じ形で置いてあったのを。(いつもは社員のロッカーにしまってあるはずが、デスクの横に立てかけてあったのです。)
「まさか・・・」と思いました。
「K先生、もしかして教室に泊まったんですか?」と私は聞きました。
すると、K先生は少し照れた顔で
「あれ、バレちゃいましたか。でも、着替えもしているし、お風呂も近くのスーパー銭湯で入って来ましたから。汚くないですよ (笑)」と何事もなかったかのように言ったんです。
その後、K先生から衝撃の話を聞きました。
その週は忙しいから、実は家には帰らずにできるだけ教室にいて仕事をしていたこと。
月の後半は忙しくなるからたびたびこういうことはあるんだよ、ということ。
K先生は最後に冗談っぽくこう言いました。
「私の仕事が遅いからダメなんですよね(笑)。」と。
私は猛烈に恥ずかしくなりました。
自分がこの一週間何をやって、何を思って生活をして来たのか。
仕事が終わって家に帰り、ビールを飲んでテレビを見て。
朝は出社ギリギリまで寝て。
そして、仕事場に来ては自分の好き勝手なことをKさんにぶつけて。
自分勝手にKさんにイラついて。
(Kさんが俺の言うことなんて聞いてくれる訳ないじゃないか。それが当たり前だ。こんなに仕事が大変で、こんなに忙しい人が、俺みたいな若造の戯言に付き合ってくれるわけないじゃないか。いや、Kさんはそれでも「しゃべる前に仕事をしろ」とか「黙ってくれ」とか、そんなことは一つも言ったことがなかった。きっと俺のくだらない話にイライラしながらも、グッとこらえて辛抱してくれていたんだ…。)
この時まで私はKさんを理解しようとはして来なかったんです。
Kさんのことを全く理解しようとしてなかったにも関わらず、自分のことだけは理解してもらおうという自分勝手な考えを持ち続けていたんです。
そして、勝手にストレスを溜めていた。
本当にバカで甘えた青二才でした。
それから私はKさんのことを少しでも理解できるように出社時間を早くしました。
そして、できるだけ感情的な話をKさんに言うのは辞めました。
Kさんの仕事ぶりをよく観察して、何か話があるときはKさんが少し落ち着いているときを見計らって話すようにしました。
Kさんの時間をできるだけ無駄にしないように、伝えたいことを簡潔に話すようにして、疲れているKさんが少しでも元気になってくれるように笑顔で元気よく話しかけるようにしました。
そうすると、不思議とKさんは以前よりも私の話を聞いてくれるようになりました。
そして、私が出したアイディアをさらに上の部長などに伝えてくれるようにもなりました。
私はこの経験を大事にしています。
塾講師として、生徒さん達に私の話すことを理解してもらわなければいけません。
そうでなければ皆さんの成績は上がりませんから。
「この人の話をちゃんと聞こう!」
そう思ってもらわないといけないのが我々の仕事です。
まず、自分や自分の塾のことをちゃんと理解してもらわないといけないんですね。
でも、「理解しなさい!」なんて無理やり言ったって、言われた方は嫌がるだけです。
私だって誰かから「自分のことを理解してほしい!」なんて一方的に言われても、ストレスが溜まりますから。(タイムマシンがあったら過去に戻って青二才の自分自身に言ってやりたいです・・・笑)
まず、相手を理解すること。
理解しようと努めること。
それで初めて相手から理解してもらえる。
そして、相手が話を聞いてくれる。
私は、その考え方を今もとても大事に抱えています。
「理解してから理解される」
その言葉を思い浮かべるたびに、
「私の仕事が遅いからダメなんですよね(笑)。」
と言ったKさんの笑顔が思い出されます。
昼間の時間帯に樋口や矢田と生徒さんの話や授業の話を毎日のように重ねています。
その中で私はたびたび二人にも伝えています。
「まず、その子を徹底的に知ること。その子が何を大事にしていて何を嫌がるのか。話を重ねて理解するように。そうでなければこちらの話は聞いてもらえない。」と。
最近は私よりも教室長の樋口の方が、「〇〇さんともっと話をして情報を集めよう。何に悩んでいて、何を目標にしているか、ちゃんと話を聞こう。」など提案するようになっています。
定期テストの時に、樋口や矢田が生徒さん一人一人の面談をしているのはそのためなんです。
小中学生の皆さんには少し難しい話になってしまいましたね。
でも、皆さんももしかしたら友達関係や、家族の中でこの考え方が役立つかもしれません。
「なんかあの子って自分の言うことをいまいち理解してくれないんだよね。」と思うこともあるかもしれません。
でも、それは相手も同じなのかもしれません。
自分が相手を理解していないからこそ、相手も自分のことを理解してくれないのかもしれません。
まず友達のことを理解しようと話をじっくり聞いてみたら「意外に大きな悩みを抱えていた」なんてこともあるかもしれません。
その悩みを聞いてあげるうちに、相手のことを深く理解できるようになって、相手もまた自分のことを理解してくれるようになるかもしれません。
「うちのお母さん(お父さん)はいつもガミガミ言うばかりで、こっちの言うことを何も聞いてくれない!」
そんな風に感じる人も多いかもしれません。
でもまず自分が、お母さん、お父さんを理解しようとしてみることも大事かもしれません。
朝起きて自分たちの学校の用意をしてくれ、すぐに仕事に向かう。そして仕事から帰ったらすぐに夕食の用意、次の日の準備をしてくれる。
自分の言うことを聞いてもらう(=理解してもらう)前に、忙しいお母さん、お父さんのことを理解しようとしてみる。
そうすると、「多少のことは我慢しないと申し訳ない。」と思うことができるかもしれません。
「いつも自分のために頑張ってくれてありがとう。」と感謝の気持ちを持てるかもしれません。
そして、そんな皆さんの気遣いにお母さん、お父さんも元気がもらえるかもしれません。
お母さん、お父さんだって元気であれば皆さんの話を聞かない訳ないのです。大事な大事な子どもなんですから。
(私自身も元気があれば、「ちゃんと子どもたちの話を聞いてあげよう!」という気持ちになります。ただ、いつも元気に…とはいかないところがなかなか難しいのですが。。)
偉そうな記事を長々と書いてしまい、申し訳ございませんm(__)m
でも、「理解してから理解される」という言葉は本当に大事だと私自身は思っています。
小中学生の皆さんだけでなく、卒業生の高校生や大学生、そして社会人になった人たちにも送りたい言葉の一つです。
今、人間関係で悩んでいる人がいたら、この言葉を少しだけ意識してみるのも良いのかもしれません。