勉強をしているとき「英語の単語が覚えられない!」「歴史に登場する人の名前が覚えられない!」「漢字が覚えられない!」と思うこと、ありませんか?
記憶することができない、というのは勉強をする上でよくある悩みだと思います。
私自身、英単語を勉強しますが、100個の英単語を覚えるために、単語帳を10周以上しています。しかし、それでもやはり覚えられていない単語もありますので、やはり単語を覚えるというのはそう簡単なことではありません。
また、わたしはしばしば本を読むのですが、その読んだ本の内容も、ほとんど忘れてしまっています。どの本を読んだのかは記憶に残っているのですが、本の内容や細部は全くと言っていいほど記憶に残りません。頭に残るのは漠然とした雰囲気や些末な知識ぐらいで、登場人物のセリフや、含蓄のある言葉などは忘れてしまうことが多いです。
ただ、情報技術が発達している現代、忘れる前にスマホやタブレットにメモを取ることが可能です。
もちろん、電子機器ではなく紙のノートに読んだ本の内容、忘れてはいけない授業内容などをまとめることもできます。授業でも、よく出題される問題の解き方をノートにまとめたりしています。それが十全に活用できているかは別の問題ですが……
とにかく、単語などを覚える際には、覚えにくいものだけをピックアップしてノートにまとめる、ということをすると、効率的に単語が覚えられます。「am」「not」「me」などは書かなくても覚えられる人が多いと思います。簡単に覚えられる単語をわざわざ覚えなおす必要はありません。自分が覚えにくいものだけを選び、自分だけの単語帳を作る、という過程を踏まえて勉強すると、また違った覚え方ができるかもしれません。
ただ、何かに記録を残す、ということにも弊害はあります。
それは、自分の記録がずっと残り続ける、ということです。
たとえばスマホのメモ帳。大学の受験勉強をしていたころ、わたしはスマホのメモ帳に覚えなければいけない単語をまとめていました。
受験期にはそれを活用していたのですが、受験が終わると当然見なくなります。しかし、わたしのスマホのメモ帳アプリには、そのときの単語集がまだ残ったままなのです。
SNSでの発言もずっと残り続けます。Xやインスタグラムに投稿した発言は、操作をしなければずっと残り続けます。皆さんがもしも有名人になったとき、SNSにつぶやいた些末な発言を変な風に解釈されて大炎上が巻き起こる、ということもあるかもしれません。
大炎上、とまでいかなくとも、就職活動をしているときに、そういった個人のSNSを調べられて就職に不利に働く、という話もしばしば聞きます。
人間の脳はむなしく記憶を失うのですが、情報機器はそうではありません。何かまずいことが起きれば、今後、その記録は半永久的に残ります。
嫌なことがずっと残る、という情報機器の機能に比べたら、人間の「忘れる」という能力ははるかに穏当です。
その「忘れる」という行いがものすごく役に立った事例が、歴史に残っています。それが、古代ギリシアの「ペロポネソス戦争」です。
今から2000年以上前に起こったペロポネソス戦争は、ギリシア全域を巻き込んだ大規模な戦いでした。戦争は25年ほど続いて、やがて一方が降伏をし戦争は終結したのですが、戦いの影響は大きくギリシア社会は混乱に陥ったそうです。
そこでギリシアの市民が取った方策は「公の場では、戦争がなかったかのように振る舞うこと」でした。実際に戦争は起こり、そのダメージも当然大きかったと思いますが、それでも戦争を「思い出さない」ように振る舞い、傷を乗り越えようとした、という話です。
それがいいことであるかどうかはともかく、「忘れる」能力には嫌なことを乗り越えられる力が備わっています。もちろん、過去の反省は非常に大切で、一つの失敗を全て忘れてしまって何度も同じ失敗を繰り返すのは、あまり良いことではありません。
しかし、一つの間違いを何度も何度も責め立てたり、引き合いに出して批判したりするのは建設的ではありません。
ただ、忘れることともうまく付き合っていけると、違った道が開けるのではないでしょうか。