世界一高い山の謎

 先日、矢田先生が担当する中学校一年生の理科の授業を教室の後ろから見ていました。その日、勉強したのは火山についての単元で、生徒はマグマや溶岩などといった用語を覚えようと努力していました。

 さて、世界で最も高い山は何だかご存知でしょうか。

 正解は言うまでもなく、エベレスト。ユーラシア大陸のヒマラヤ山脈にある山で、チベット語ではチョモランマと呼ばれています。

 標高は8848メートルで、富士山の2倍以上の高さを誇ります。

 人類がこの山の頂上を踏んだのは1953年のことで、ヒラリーとノルゲイという二人の人物によって成し遂げられました。実際のエベレスト登山はもっと大勢の人が参加したのですが、そのほとんどの人はサポートにまわり、頂上に立つことができたのはたったの二人だけ。チームワークによって、その偉業が成し遂げられました。

 ヒラリーとノルゲイ、この二人の人物がエベレスト初登頂の人物として知られているのですが、実は、それよりも前に、エベレストの山頂に立ったかもしれない人間がいます。

 ジョージ・マロリーとアンドリュー・アーヴィン。この二人の人物は1920年第にエベレストに挑戦し、そしてそのまま行方不明になりました。

 マロリーたちが他の登山者によって最後に目撃されたのは、山頂から250メートルほど下の位置でした。彼らの姿はすぐに雲に隠されて、そのまま見つからなくなってしまうのですが、後に、アーヴィンの登山道具が発見されます。その登山道具は、最後に二人が目撃された場所よりも低い地点で見つけられました。その登山道具なしでは上に登ることはできないので、道具を落としたのは最後に目撃された時点よりももっと後のことだと推測されます。この推測から「二人はエベレストの頂上に登ったあと、下山する途中で命を落としたのではないか」という疑問が生まれます。

 マロリーとアーヴィンの二人はエベレストの頂上に立てたのか?この謎はいまだに解明されていません。おそらくこれからも解明されることはないと思います。

 生前、マロリーは記者から「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」と聞かれたとき、「それがそこにあるからだ」という簡潔な答えを返しています。彼にとっての山への想いは尊いものである一方で、単純明快なものだったのかもしれません。そんな彼が、最期に世界で一番高い場所からの景色を見ることができたのかどうかという永遠の謎が、エベレストという山の神秘性をよりいっそう強めているのかもしれません。

TOP