『読んだことのない本について堂々と語る方法』を読まないで語る

 これまで本の紹介コーナーでは、わたしが読んできた本を50冊ほど紹介してきました。そんなに冊数を重ねると、さすがにマンネリ化するというか、飽きてしまうこともあります。少なくともわたしはもうあきあきしちゃいました。

 ですから今回はなんと、思いきって、読んだことのない本の紹介に挑戦します。

 紹介するのは、ピエール・バイヤール著『読んだことのない本について堂々と語る方法』という本です。『読んだことのない本について堂々と語る方法』について、読んでもないのに語りたいと思います。

 しかし、こうしていざ何かを書いてみようとすると、何も書くことが思い浮かびません。不思議ですね、どうしてでしょうか。やっぱり本を読んでいないことが原因なのでしょうか。

 このまま終わってしまうと、まったく読み応えのない文書になっていまいますので、何とか、言葉を続けたいと思います。

『読んだことのない本について堂々と語る方法』という本は、おそらく「読書なんて時間のかかる行為、やってられないよ、ずるしちゃお」という思いを正当化する本ではないと思います(読んでいないのでわかりませんが)。そうではなく、読んでいない本についての周辺情報などにスポットを当てて、そちらの情報を整理して内容を推測するメソッドについて書かれた本なのではないでしょうか(これも読んでいないので、ちがうかもしれませんが)

 例えば、夏目漱(なつめそう)(せき)の『こころ』を読んでいないのに語る時には、まず『こころ』という作品自体がものすごく有名である、という情報があります。そのうえ、100年以上も前にかかれた作品なのに、いまなお、読みつがれています。これらのことから察するに、『こころ』という作品は時代を経ても親しまれるすばらしい作品である、と語ることができます。

 また、『こころ』が書かれた当時の時代に目を向けると、違った情報が得られます。『こころ』がかかれたのは、1910年ごろ、西洋の文明が日本に流れ込んできて、人間の価値観も大きく変わっていった時代であります。当時の人々は、激動(げきどう)の時代の間で楽しむこともあれば悩むこともありました。『こころ』は、その時代のダイナミックな動きに左右される、人間の微小(びしょう)なこころを描いた作品なのではないか、と言えます。

 ここまで『こころ』の内容には触れずに、周辺の情報だけでいろいろと語ってみました。はじめに名前を出した、『読んだことのない本について堂々と語る方法』には、このように、いろいろな角度から作品を語るためのノウハウが書かれているのではないかな?と思います。読んだことがないのでわかりませんけれど。

 もしも読んだことのない本について語ることができたら、最高ですよね。そうなったら読書感想文なども、読んだことのない本で書きまくれるわけです。学生のみなさん、この『読んだことのない本について堂々と語る方法』を読んで、読んでない本で読書感想文を書くというのはいかがでしょうか。あるいは、この『読んだことのない本について堂々と語る方法』を読まずに、この本自体の感想を書くというのも、非常にユニークかもしれません。「読まないで語る」という、題名に書いてあることの実践にもなります。先生によっては怒られるかもしれないので、注意してください。責任は一切おいません。

 いつか『読んだことのない本について堂々と語る方法』を実際に読んで、答え合わせをしたいと思います。(大崎)

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