奇跡は起こせる

少し前に中3生Aクラスの授業中、ある卒業生の話をしました。

S君という生徒です。

結論から言いますと、彼は第一志望の川越南高校に見事合格しました。

そんな彼の中1の内申点(通知表の9教科合計)は28、中2での内申点は29でした。

さらに彼は中3の一学期中間テストの5教科合計点は300点を切っていました。

そこから川越南にどうやって届いたのか?

気になると思います。

「夏の間にものすごく成績を伸ばしたんだろうな。」

そう想像すると思います。

しかし、厳しい現実がS君には次々に襲い掛かりました。

彼は中3の一学期に山口学習塾に入塾してくれました。

入塾当初から目標は、川越南一本、それ以外は興味なし。

当然、S君自身も今の自分の実力や成績が川越南から遠く離れていることを自覚していました。

ですから入塾直後から必死の努力が始まりました。

夏期講習も周りの受験生よりも努力していたと思います。

満を持して臨んだ9月の北辰テスト。

夏前よりも偏差値を落としてしまいました。

10月の北辰テスト、なんと9月の北辰テストよりも結果を落としてしまいました。

11月、12月もほとんど変わらず…

私が指導して来た生徒の中でも、もしかしたらS君だけかもしれません。

あれだけ努力をしたのに、ここまで北辰テストの成績が伸びなかった生徒は。

今、「あれだけ」と私は言いましたが、彼は家が塾から遠いにも関わらず、どの受験生よりも早く塾に来て、そしてどの受験生よりも遅くまで塾にいました。

つまり、毎日一番長く塾にいる生徒だったのです。

我々が決めた「毎日3時間半」という決まりなど彼は完全に無視して、それよりも長い時間毎日勉強をしていました。

私も彼の勉強方法やテストの解答など、いつもチェックをしていました。

力もそれほどないわけではない、知識もたくさん詰め込んでいる、それなのに本番になるとどうしても力を発揮できない。

私自身もテストの結果が返ってくるたびに、S君のテスト結果とS君が行っている学習内容や学習量を照らし合わせ、いろいろ悩む日々が続いていました。

秋から冬にかけての北辰テスト、川越市の学力テスト、その全てで合格判定の出ないまま、公立入試の出願日の直前となっていました。

塾で行う入試模擬テストも8回目まですべて不合格の判定。

合格可能性は5%未満。入試模擬テストも残すところあと2回…

ついに彼はラスト2回のところでようやく結果を出しました。

入試模擬テスト9回目にして、ようやく合格可能性が30%程度の結果を出したのです。

すでに季節は2月、本当に入試直前です。

私は飛び上がりたくなるほど嬉しくなりました。

その入試模擬テストの結果を彼に返すときに、「ついにやったな!」と彼の肩を叩き声をかけました。

すると彼は一言、

「でも、本番じゃないので。」と。

私は拍子抜けしてしまいました。

あれだけ努力をしながら、何度も北辰テストや川越市の学力テスト、そして塾での入試模擬テストで苦い結果を突き付けられ、悔しい思いをしてきたはずなのに…。

ようやく見えた希望なのに嬉しくないのか…?と。

しかし、思い返せば彼はどんな悪い結果が出たとしても、淡々とそれを受け入れ、勉強に向かっていたのです。

次々に不合格判定を突き付けられても

「これで俺の入試が決まる訳じゃない。本番で1点でも合格点に達すればいいだけの話。そのために努力を続ければいいだけ。」と、常に言っていたのです。

だからこそ、最後の最後で良い結果が出ても、今までと同じように「これは本番ではない。」と、冷静に受け止めたのだと思います。

塾での最後の入試模擬テスト、彼はついに合格可能性70%のところまで持って行きます。

しかし、やはり彼はいつもと同じように、

「これは本番ではない。このテストの結果で受かる訳ではないですから。」と淡々と私からテストの結果を受け取りました。

彼が感情を爆発させたのは、最後の最後、本番の入試の合格発表の時だけです。

「先生、俺、マジで受かっちゃったよ!超、嬉しい!!」とものすごい笑顔で報告をくれました。

学校の先生には「奇跡が起こった」と言われたそうです。

でもそれは違います。

たしかに「奇跡」と言えるような大逆転劇だったかもしれません。

でも、それは「起こった」のではなく、「起こした」のです。

S君が自分自身で起こした奇跡です。

彼は何度も何度も不合格判定をもらいました。

あれだけ不合格判定をもらった生徒もなかなかいません。

彼の表情、彼のセリフは常に淡々としていましたが、内心はいつもショックを受けていたはずです。

暗い気持ちで毎日を過ごしていた時期もあるはずです。

「もうダメかもしれない…」そう思ったことだって何度もあったでしょう。

しかし、彼は手を止めませんでした。

自分自身に課した「誰よりも早く塾に来て、誰よりも遅くまで塾で勉強する」という決まりを誰に言われるでもなく、最後の最後まで守り続けました。

私は後にも先にも、これほど精神力の強かった生徒を知りません。

長い受験生活、誰でも一度は挫折したり、油断したりします。

そして、勉強時間が減ってしまったり、集中力を切らしてしまったりすることもあります。

でも、S君は違いました。


受験生の皆さん、これから次々とテストの結果に向き合わなければいけない時期がやってきます。

不安になるときもあるでしょう。

「もう嫌だ」と思うときもあるでしょう。

泣きたくなるほど心が沈むこともあるかもしれません。

でも、手を止めなければ奇跡は起こせます。

大逆転は起こせます。

受験勉強で辛くなった時、ぜひこのSくんの話を思い出してほしいと思います。