朝井リョウ『何者』

 突然ですがみなさん、社会に出るのってとてつもなく恐ろしいですよね。わたしは今年大学四年生になるので、いやでも就職活動の情報が目に入ってしまいます。メールフォルダはさまざまな企業からの案内で埋まり、インスタグラムでも就活の役に立つ情報が(頼んでもないのに)勝手に表示され、ツイッターのタイムラインにも就活支援のサイトのリンクが流れてきます。

 最近の就活で話題になっている単語が「ガクチカ」。これは「学生時代に力をいれたことは何ですか?」という、面接で訊かれることの多い質問を略したものです。のんべんだらりと日々を送っている自分なんかはこの質問がなされる面接会場を想像しただけで、頭が痛くなってしまいます。何と答えるのが正解なのでしょうか?案外、見られているのは答えの内容よりも、伝えたいことが明瞭に伝えられているか、話に不鮮明に部分はないかといった答え方のほうなのかもしれません。こんなストレスのかかる選定をくぐりぬけた社会人の方々には、本当に頭が上がりません。

 朝井リョウ著『何者』は現代の就活の人間模様を描いた作品です。SNSを使ってなされる就活合戦は、次第に自意識の痛みを伴うような、苛烈なものになっていきます。受験はよく戦争だと呼ばれるのですが、就活もまた、戦争だといってもいいかもしれません。

 聞いた話によると、面接などで落とされると、まるで自分の人間性を否定されたかのように感じる人がいらっしゃるそうです。就活にかける思いが強いと、そのぶん失敗したときの痛みが増すのかもしれません。『何者』が描きだすのはそういった就活の痛々しい部分です。朝井リョウのデビュー作『桐島、部活やめるってよ』も、高校生の不和やほんのり重たい部分が描かれています。ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。(大崎)