似鳥鶏『叙述トリック短編集』

 突然ですが皆さん、ペットは飼われているでしょうか。私のキーボードの前にはタマがいまして、この文章を書くのを邪魔しています。にゃんでそんなことをするんでしょうかね。ああ、タマのせいで打ち間違えてしまいました。

 余分な導入はここまでにして本題に入りましょう。皆さんは「叙述トリック」という言葉をご存じでしょうか。

 これはミステリー小説で使われる用語で、簡単に言えば、書き方そのものを利用して読者をだます手法のことを言います。小説の場合、読者は文字を通して作品の世界を理解していくので、アニメや映画などの映像作品と違って話している人物がどのような人物なのか、どのような場所で話が展開しているのかといった情報を視覚的に把握することはできません。叙述トリックはそういった小説の特性を利用して、男性を女性と誤認させたり、昔の出来事を今現在起こっているかのように見せかけたりします。

 叙述トリックの小説はこのような紹介コーナーではなかなか扱いにくいです。というのも「この作品、叙述トリックが使われているよ」と言っただけで「この人は男っぽく書かれているけど本当は違うんだろうな」とか「実は語り手が犯人なんだろうな」とか疑ってしまってしまうからです。作品全体にトリックが施されていることが多いため、読み方が大きくゆがんでしまうんですね。

 しかし似鳥敬 著『叙述トリック短編集』は題名の時点で叙述トリックが使われていることを明かしてしまっています。叙述トリックはしばしば、探偵小説的に反則技とみなされることが多いんですが、タイトルで明かしてしまっているのなら問題は生じません。正々堂々読んで、正々堂々騙されることができます。騙されることがある種楽しい、まるで手品をそのまま読んでいるかのような小説です。ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。

 さて、今回もそろそろ終わりにしたいと思います。犬のタマにドッグフードをあげなければなりませんしね。もうキーボードの周りにもいないんで「にゃんでそんなことを」とか誤字をする心配もありません。(サポーター大崎)