「時を戻そう」高水裕一『時間は逆戻りするのか』

 突然ですが皆さん、時間を巻き戻したいと思ったことはありませんか?私は頻繁に思っています。最近、特に時間を戻したいと思ったのは、中学校の同窓会のライングループで他人の招待を間違えて消してしまった時でしょうか。あの時ばかりは泣きそうになりましたね。今思い出しても冷や汗が止まりません。まさかこの年齢になって、中学の同級生に対して孤立感を抱くことになるとは思っていませんでした。皆さんも気を付けてくださいね。

 現実は非情なもの。いくら「時よ戻れ」と念じても、一度起こってしまったことをやり直すことはできません。「覆水盆に返らず」ということわざにもあるように、一度ひっくり返してしまった水が容器に返ることはないのです。

 しかし、本当に時間を巻き戻すことは不可能なのでしょうか?覆水を盆に返らせることはできないのでしょうか?他人のグループ招待を消してしまったことを、取り消すことは本当に不可能なのでしょうか?

 高水裕一 著『時間は逆戻りするのか』は現代の物理学から見て、時間を巻き戻すことは可能であるかを検討した本です。

 そもそも時間とは何でしょうか。当然のことですが、時間そのものは眼には見えません。私たちが時間を認識できているのは、時計の針が1から2まで動いたと認識するように、物事の移り変わりを時間の移り変わりとして認識しているからですよね。人間が時間そのものを感じることはできるでしょうか。一体全体、時間とはどういう現象なのでしょうか。それを問うことからこの本は始まります。

 時間は過去から未来に向かって一定の速度で流れているように感じられます。一秒の長さが短くなったり長くなったりすることは、日常生活上ではまずありません。そんな絶対的な尺度として扱われることが多い時間ですが、実は重力や物体の速さによって時間の進む速さは変わるのです。地上とスカイツリーの頂上の時間の進みを比べると、より重力が強い地上の方がわずかに時間の進みが遅いという実験結果もあります。ゆるぎない絶対的なものだと思われていた時間は、実は伸びたり縮んだりする相対的なものだったのです(ちなみに「絶対」の対義語は「相対」です)。これは100年も前にアインシュタインが相対性理論で提唱したことでもあります。

 皆さんは時間のことをどれくらい知っているでしょうか。時間が重力によって変わってしまうということ、ご存じだったでしょうか。時間や重力、それに宇宙にはまだまだ分かっていないことが星の数ほどあります。それらの謎が明らかになるにつれて、時間の巻き戻りが可能になるような理論が今後、打ち立てられるかもしれません。高水裕一 著『時間は逆戻りするのか』はそんなロマンやわくわくが止まらなくなるような素晴らしい本です。科学に興味がある方、宇宙を夢見ている方、他人の招待を取り消してしまった方がいましたら、(もちろん、それ以外の方も楽しめることは間違いありません)ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。