「晩年の芥川」

前回は太宰治『晩年』について書きました。今回は芥川龍之介について書きたいと思って彼の「歯車」という作品を読み返していたのですが、物凄く暗いです。前回お話ししたように、太宰は暗いという評価がされがちなのですが、個人的には芥川のほうが救いのない小説を書いているように思います。

 芥川龍之介は「鼻」という短編を夏目漱石に絶賛されて、その後も説話物語などの古典を下敷きにした短編を多く発表します。「羅生門」もその一つで、『今昔物語集』を題材にしています。

 しかし、晩年になると作風ががらっと変わります。芥川は前回の太宰と同じように、若くして自分の命を絶っていますが、「歯車」はその少し前に書かれた小説ということもあって、病的なまでに重苦しく、ある種狂気的とまで言える描写がなされています。

 ところで皆さん、ドッペルゲンガーというものをご存じでしょうか。もともとはドイツ語でDoppelgängerと表記します。このドッペルゲンガーは自分の分身のようなもので、これに遭遇すると死に至るという伝説があります。

「歯車」にも数行だけですがドッペルゲンガーの描写があって、自分の知らない場所で自分の姿が目撃されているというなんとも不気味な話が出てきます。芥川は自分の身近な体験を下敷きに「歯車」を書きました。もしかしたら本当に、死の直前にそのような体験をしたのかもしれません。

 ところで、青空文庫というサイトがあるのをご存じですか。青空文庫は著作権の切れたテクストを掲載していまして、無料でたくさんの文学作品が読めます。芥川はもちろん、前回紹介した太宰の作品も読むことができます。夏休み余裕があったら、様々な作品に挑戦してみてはいかがでしょうか。 (サポーター大崎)         

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