デレク・ハートフィールド『冒険児ウォルド』

突然ですが皆さん、デレク・ハートフィールドという作家をご存じでしょうか。知らない方がほとんどだと思います。私もつい先日まで知らず、同じアドバイザーであり、私よりもはるかに本に親しんでいる佐伯さんに教えてもらって初めて名前を聞きました。

 さて、彼は1909年にアメリカ、オハイオ州の小さな町で生まれ、1938年のある晴れた日曜日の朝にニューヨークのエンパイア・ステート・ビルから落っこちて亡くなりました。ハイヒールの踵ぐらいの小さな墓には、哲学者ニーチェの「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか」という言葉が刻まれているそうです。

 今日、彼の名前はあまり知られていませんが、文章を武器にして戦うことのできる作家だったそうで、ノーベル文学賞を取ったヘミングウェイや富裕層の空虚感を描いた『グレート・ギャツビー』で名高いフィッツジェラルドにも劣らない作家だった、という評価が一部でなされています。

 代表作は冒険小説と怪奇ものを組み合わせた『冒険児ウォルド』シリーズです。書店などで見かけたらぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。

 本日も閲覧、ありがとうございました・・・・・・

と、言いたいところですが、もう少しだけ続けさせていただきます。

 実はデレク・ハートフィールドという作家は現実世界に存在しません。上記の彼についての記述は巧妙に造られた嘘の話です。この作家は、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』という作品においてでっちあげられた、虚構の人物なのです。

 村上春樹の筆力は凄いもので、当時、『風の歌を聴け』が売り出された時にはデレク・ハートフィールドという作家が本当に存在すると思った人々が図書館や書店に殺到し、混乱に見舞われたそうです。

 存在しない人間をあたかも存在しているかのように見せることができる作家はめったにいません。偉大な作家のひとりとして挙げられることが多い村上春樹の文章に、ぜひ触れてみてはいかがでしょうか。

(サポーター大崎)